思い出に残るお父さん。

12年、塾をやってきて、様々な保護者の方に出会いました。

お一人お一人、思い出があります。

 

保護者の中で、尊敬する方はたくさんいます。

そんな保護者の方々の、お一人の話です。

 

そのお父さんと私の出会いは、大ゲンカから始まりました。

理由は、仙台一高に必ず息子を入れて欲しいと言われたこと。

 

当時、学区統合前で、仙台一高は南学区のトップ校。

その学校に必ず合格と言われれば、答えに窮するのは当たり前。

しかも、お子さんの平均評定は、2.9。

平均評定が3に満たないのです。

「難しいと思います。」

それが私の答え。

 

その答えに対して、お父さんは怒りました。

「自分は息子に無限の可能性を信じている。」

お父さんは、何度も何度も私に訴えかけました。

「本気で、息子を仙台一高に入れて欲しい。」と。

 

私も熱くなり、生活態度や、学力、周囲の評価を含めて無理だと声を荒げてしまいました。

押し問答の末、お引き取りいただいたのですが、次の日も、そして次の日も、お父さんは連絡をくださいました。

 

ついに、私も折れて入塾。

そこからお父さんと息子さんの戦いは始まりました。

お父さんは、どんな時も、息子の可能性を信じました。

 

反発する息子に殴られて、顔から血を流すお父さん。

激高した息子に、大切な仕事の携帯電話を折られたと、力なく笑うお父さん。

息子が塾をさぼり、私に頭を何度も下げるお父さん。

 

そんなお父さんの姿を見て、私も本気でその生徒を仙台一高に合格させると決意しました。

学校の先生からの評価が低く、最終評定は、結局3。

 

でも、私とお父さんは、彼の可能性を信じました。

私は生徒の可能性とともに、お父さんを信じました。

「このお父さんの執念があれば、この子供を信じる強い気持ちがあれば、不可能が可能になる。」と。

 

生徒と私は毎日毎日、会話をしました。

どれだけ彼が父親に愛されていて、どれだけ父親が偉大な人かを。

 

ついに生徒は本気を出しました。

父親が信じた姿に、どんどん変わっていきました。

そして合格発表。

掲示板の前に並ぶ、父親と息子。

結果は合格。

 

報を受け、私は様々な場面のお父さんを思い出しながら、泣きました。

今も、このブログを書きながら、鼻水を流して泣いてしまいました。

 

何者にもとらわれず、子供の未来を信じる心。

親の子供を信じる力。

私はたくさんのことを、そのお父さんから学びました。

 

彼は、仙台一高から、中央大学に進みました。

うちの講師の1人が、仲よく買い物をする、親子を見かけたそうです。

何度も何度も、感謝の言葉をかけられたそうです。

 

でも、感謝すべきは私のほうです。

たくさん学ばせて頂き、ありがとうございました。

 

このブログがいつか、貴方の目にとまるよう願いを込めて。

 

「ありがとうございました。」